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トップページ > きもの英・創業物語 > 第3章 「女魚網屋さん」と呼ばれて

英の創業物語 聞き書き・武田豊子一代記

「女魚網屋さん」と呼ばれて

 

母が懸命に働くうちに、ナイロン・テグスの釣糸は世間に浸透していきました。同時に、会社と釣具店が特約店契約を結び直接卸す形態がとられるようになってきました。そこで母が次に手がけたのが、漁網です。ナイロン・テグスと漁網の違いを少し説明しますと、ナイロン・テグスは一本釣り用の釣糸のことで、それ自体も一本の糸、いわゆるピアノ線のようなものです。一方、漁網は海中に仕掛け、あるいは投げ込んで一度に多くの魚を獲る網のことで、その糸自体も縫い糸のようにより合わせたものでできています。ナイロン・テグスが一般に浸透していく一方で、販売会社は合成繊維の開発を進め、初めて漁網をつくり出したのでした。それまでの漁網は天然繊維でできたもので、腐らないよう手入れが必要なため、漁師さんも大変でした。しかし開発された漁網はその手間がいらないうえ、水中では透明になるので魚がかかりやすいという利点がありました。母は魚や漁についてほとんど知識を持ち合わせていませんでしたが、とにかくこうした利点だけを説明してがむしゃらに売り歩いたのです。

女魚網屋さん

よく聞かされた当時の思い出話のひとつに、こんなエピソードがあります。ある時、「魚群が近づいているので何月何日までに欲しい」という期限付きで、かつてない大量注文が入りました。しかし期日を過ぎても品物が届かないので慌てて大阪の本社に飛んで行くと、とても生産が追いつかないというのです。母は三重県にある製網会社まで行って交渉したそうです。その会社では「若い女の子がそこまで責任感を持ってやっているとはたいしたものだ」と、職人さんが総動員で徹夜して漁網を完成してくださったのだとか。こうして出来上がった大漁の網を母が届けるやいなや、漁師さんたちは沖に仕掛けに行きました。魚の大群が漁場めがけてやって来たのはその翌日。魚を捕まえるとガッチリ食い込んで離さない特質もあいまって、漁場は近年にない大漁に沸き返ったそうです。この経験で、母はあらためて責任を果たすことの重要性を教えられたと語ります。

 
それにしても今更ながらに驚嘆するのはこの母の運の強さです。ただ一生懸命だけがとりえの行商だったにもかかわらず、販売した漁網はどこの漁場でも大漁を招きました。次第に母は、当時でも珍しい「女魚網屋さん」として知られていくようになりました。

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