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第16章 自慢の縫製技術

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きもの英・創業物語
~ 聞き書き・武田豊子一代記 ~​

第16章 自慢の縫製技術

洗える着物の品質を担保するうえで一番大切なポイントは、その縫製にあります。「洗える」ことを標榜する以上、何度洗濯をしても変わらぬ美しさを保つものであることは絶対条件です。それは、ひとえに縫製技術のよしあしにかかっています。時折、街なかで着物の褄や袖口の縫い目が引きつれて袋になってしまっている人を見かけることがありますが、これは安ものだと自ら喧伝しているようなものです。確かな縫製技術は、絹にひけをとらない着物をつくるために最も重要な課題でした。
しかし、まだ新しい素材を扱うだけに、それは想像以上に困難な道のりでした。たとえば縫う手加減ひとつにしても、絹とはまったく違い、技法にも独自の工夫が必要でした。そうなると絹と同じ職人が縫っていては、いつまでも手が一定に定まりません。また、当初は縫製場を持たず、内職の方にお願いしてきましたが、発注の増加とともに、安定した品質のものを決められた納期に納めることにも限界が見えてきました。母は専任の仕立て職人による縫製場の必要性をひしひしと感じました。
そんな時にご紹介いただいたのが仕立師の木下清彦先生です。お会いして母が洗える着物への思いを語らせていただいたところ、先生も意気に感じてくださったそうです。それから、先生と母の二人三脚で縫製技術の研究が始まりました。そして、気の遠くなるような試行錯誤の結果、満足のいく技術の完成を見たのです。その鍵を握るのが、木下先生が培ってこられた伝統技法「男仕立て」。くけ台を使わず、両手両足を使って全身で縫い上げるという縫製方法です。これに生地のクセを見極めた縫製技術を駆使し、さらにアイロンがけには熟練した職人が1時間半以上の時間を要する念入りな仕上げ。こうした独自の仕立て技術を駆使した結果、お客様から「英の仕立ては違う」とお褒めの言葉を頂戴するまでになりました。

さらに木下先生は弊店の将来を見越されて、母に「これからはあなたのところの着物だけを専門に縫っていく縫製場をつくりたい」と言ってくださったのです。まさに願ってもない提案でした。こうして、おそらく日本で初めてではないでしょうか、洗える着物専門の縫製場が誕生しました。

木下先生が他界された今も、その技術は4名のお弟子さんが引き継がれ、東北4県の縫製場となって弊店の縫製を支え続けています。よく「人は宝」と申しますが、弊店にとってはそんな職人さん一人ひとりが大切な宝です。また当時、正絹の仕立て部門のすべてを捨てて、洗える着物の縫製法の開発に心血を注いでくださった木下先生の英断と尽力なくして今の「きもの英」はありません。木下先生との出逢いが、弊店の礎を築いたのだと言っても、決して過言でないでしょう。