礼を尽くす江戸小紋の装い
東京オリンピックの賑わいへの期待に満ちて明けた年が、誰も予想だにできなかった災厄で一変し、不安を抱えたままに暮れようとしています。洗える着物の専門店として歴史を重ねてきたきもの英(はなぶさ)も、まったく初めての経験に戸惑いながら、必死で知恵を絞りさまざま試みにトライした日々でした。そんな中で応援を続けてくださるお客さまのあたたかさ、かけがえのないご縁の数々に、本当に励まされました。あらためて感謝の気持ちでいっぱいになる年の暮れです。本日のコーディネイトは、そんな1年のお礼のご挨拶を申し上げる気持ちで身にまといました。着物は江戸小紋の中でも格調高い「五役」のひとつ、千筋。ダークトーンの細かな縦縞は端正な表情で、帯を替えることによって幅広いシーンに着まわせ、慶長どちらにも使えるのが特徴です。一般に弔事に着物を着ること自体少なくなっていますが、装う方のお立場によってはさらに重宝していただける着物だと思います。今回は慶事の着こなしとして、赤紫色の袋帯に、帯締めもさりげなく紅白を使ったものを選びました。帯には、シダでかたどった菱文が配されています。シダは繁殖力の高さから、長寿や一家繁栄の象徴として、お正月飾りにも欠かせない植物です。どうかみなさまが心穏やかに健やかに、よいお年を迎えられますように心よりお祈り申し上げます。