兵庫県のご出身。短大ご卒業後、米国留学、食品系の企業勤務を経て、外資系医療機器メーカーへの転職を機に東京へ。お着物でのたおやかな物腰からは想像できませんが、ご結婚後も主婦業とお仕事を両立され、わんぱく盛りの男の子のお母さんとして、日々奔走中です。
息子のために晴れ姿を
「入学式のお母さんは着物だよね」…息子を出産後、夫が何気なく発したひとことが、私の着物修業の始まりとなりました。というのも、私の実家では着物を着る習慣がほとんどなく、お嫁入りの時も、何ひとつ支度しなかったのです。ところが夫は長野の旧家出身で、「行事ごとには着物を着る」という習慣が根付いていた家庭でした。結婚当初、そういう話はほとんど出なかったのですが、親となり、やはりその価値観は引き継いでいきたいと強く思ったのでしょう。慌てたのは私です。なにせ、着物さえ持っていなかったのですから。幸い、入学式までには7年の猶予があります。東京に住む夫の姉が茶道と箏をたしなむ着物の大先輩でしたので、指南をお願いしました。快く引き受けてくれた義姉が選んだ着物のお店が英。初心者でも小さな子どもがいても、気兼ねなく着られる着物だということで、英を訪ねることにしたのが、私の着物初めであり、英初体験の日にもなりました
着物の楽しみは、まだおあずけ?
それからあっという間に10年近く。息子も今では小学校4年生です。結論から言うと、入学式ではなく卒園式になりましたが、無事に着物を着て晴れの日を祝うことができました。少しずつ買い揃え、時には着物で歌舞伎鑑賞といった贅沢な時間を楽しんだりもしています。英で催された今は亡き木村孝先生のお見立て会の時に、江戸小紋を選んでいただいたのも貴重な思い出となりました。とはいえ、普段の暮らしは着物の優雅さとはほど遠いものです。休日は親子3人、上野や池袋、銀座…とどこへでも自転車で出かけていくんですよ。今はそんな家族での和やかな日常を、かけがえのない時間として大切にしたいですね。着物でのお出かけを趣味とするベースはできましたので、本格的な楽しみはその先、もう少し時間にゆとりができるまで、とっておきたいと思います。
私のお気に入り
義姉のナビゲーションで選んだ初めての小紋
最初の一枚は、練習からちょっとしたお出かけまで着られる、応用範囲の広い小紋をと、私の着物指南役である義姉が選んでくれました。シックながらも色の表情が豊かで、柄もまさに「大人可愛い」印象。帯合わせが難しいかと思ったのですが、意外とコーディネートしやすくて応用範囲が広く、着物の頼もしさを実感する着物となりました。これからもきっと活躍してくれると思います。
優雅なフォーマルに、一人息子も笑顔
息子の卒園式のために誂えた訪問着。この日のために着物修業を始めたと言って過言でないフォーマルですから、気合いをこめて選びました。居合わせたみなさんに顔映りがいいと褒められた明るめのたまご色に、手描き友禅、金箔とゴージャスでありながら嫌味がないのが魅力。品がよく、いくつになっても着られるものが欲しかったので、とても満足しています。
夏のおよばれに備える単衣と絽
夏のフォーマルシーンに着られるものを整えておきたいと、単衣と絽も誂えました。私は仕事上、普段はダークカラーの洋服を着ていることが多いのですが、着物はどうも濃色よりも淡色のほうが相性がよいようです。たまにはっきりした色を選ぼうとすると、「それはイメージじゃない」と周囲から反対されるのです。事実、アドバイスに従って仕立てたものはすべて顔映りがよく、忠告を聞いてよかったと納得。「着物は好きな色より似合う色」というのが、私の信条になっています。