涼やかに着こなすピンク
今年になって初めてご紹介する単衣コーディネイトです。単衣の着物の薬用期間は従来6月と9月、年に2か月だけといわれてきましたが、昔と今とでは暦も気候も大きく異なります。きもの英(はなぶさ)では常々、ルールを厳格に求められる場でなければ、4月の後半から秋口までは単衣でよろしいでしょう、だって暑いじゃないですかと申し上げて、着物を頻繁にお召しになるお客さま方にご共感いただいております。ところが今年はなんだかいつまでも肌寒い日が多く、5月も終盤を迎えるまでなかなか単衣の出番がありませんでした。こんな年もあるんですね。その前に、この春は着物の出番もなく終わってしまったという方も多いことでしょう。寂しいかったですね。さて、気を取りなおして、女将好みのワントーンコーディネイトは単衣の季節も健在です。今回ははんなりと優雅なピンクコーデ。一見色無地風ですが、少し変化のある霞ぼかし柄の小紋です。ごく淡いトーンなので、ピンクの女っぽさはそのままに甘さ控えめでぐっと爽やか。あっさりとした塩瀬の名古屋帯で、さらに涼しげです。手描きの墨絵のモチーフは、初夏の野を彩るギボウシ。花茎を長く立ち上げた姿が、涼趣を伝えてくれます。シンプルに徹した着こなしは品よく、ビジネスシーンはもちろん、お稽古やお食事会など、幅広いシーンで活躍しますね。汚れが気になる淡色ですが、どんな場にもためらいなくチョイスできるのも、洗える着物だからこそです。