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ご贔屓さんのクローゼット

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  3. NO.81「寄席に、お客様に恩返しができる日まで」柳亭市弥さん

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寄席に、お客様に恩返しができる日まで

イケメンの呼び声も高い端正なマスクに、愛嬌のあるお人柄で特に女性ファンの心をつかんで離さない市弥さん。最年少で落語協会会長を務める名人・柳亭市馬師匠のもとで修業を重ね、二ツ目に昇進したのは2012年。真打目指しさらに芸を磨くべく、精力的にさまざまな席で経験を積む真っ最中です。

社会人経験を経て、師匠のもとへ

お笑いは小さな頃から好きでした。でも親の反対を押し切ってその世界に飛び込む勇気もなく、大学卒業後は広告代理店に就職。それが大阪勤務になってしまって。友人も地縁もない中で癒しを求め、笑いの本場でもあることだしと、休みのたびに花月や繁昌亭に通っていたんです。実は落語をしっかり見たのは繁昌亭の上方落語が初体験。たった一人座布団の上で、扇子と手ぬぐいだけで人を沸かせる芸に、心奪われました。それで帰京した時も、父を誘って末廣亭に出かけたんですが…そこで師匠の市馬に出会ってしまったんです。まるで素のようなしゃべりでわかりやすくて面白い。この人、凄いぞと。次の瞬間には「この人の弟子になりたい!」と今までにない強い思いが生まれました。1度しかない人生、後悔したくないからと親を説き伏せ、仕事はきっちり引き継いでから退社して弟子入りのお願いにあがり、なんとか入門を許されました。

初めて知った父の思い

その後、ひとつ驚くことがありました。父に「実は俺も噺家になりたかったんだ」と告白されたんです。そういえば子ども時代、枕元で聞かせてくれるのは子守唄でも物語でもなく小噺で、ひょうきんな父親だななんて思っていたんですが(笑)。聞けば幼い頃から寄席に通い、ランドセルを背負ったまま小さん師匠に弟子入りをお願いして断られたというんだから筋金入りです(笑)。落研時代の着物も譲ってくれました。今も落語会に来てくれますが、ヒヤヒヤして見てるんじゃないでしょうか。実際、落語界に入って思うのは、人を笑わせるのはなんて難しいんだろうということです。お客さんの目はだんだん厳しくなりますし、たとえ1度受けても次が受けるとは限りません。反省と稽古を繰り返す日々です。でもいつかは真打になってトリをとってたくさんのお客さんに成長した姿を見せることで恩返しができればと、その一心でがんばっています。

私のお気に入り

涼やかな夏の雰囲気を衣装でも

落語には日本の季節感を伝える噺も多く、噺家としてそんな実感を大切に伝えられたらと思っています。それはもちろん、衣装でも表現したいですね。それならば、夏はやっぱり絽の紋付。薄いピンクというはんなりと品のある色目を選びました。私の力ではまだまだですが、これを着ていつか「夢の酒」なんか演れるようになれればいいなと思っています。今はまだ、こんなこと言ったら師匠に叱り飛ばされそうです。

新境地のネタには、ふさわしい色柄で

落語の登場人物って、罪のない市井の人たちがたくさん出てきますよね。私もそんな人たちを演じるのが楽しくて、今のところ持ちネタは笑いどころがたっぷりの滑稽噺が多いんです。でももっと芸の幅を広げなければということで、最近になって若旦那が出てくる噺や、女性が出てくる噺にも力を入れているところです。吉原が舞台の「明烏」とか、大人の世界を垣間見る「紙入れ」とか、そういう噺には色っぽさも必要です。こんなちょっとやわらかめの色柄が合いますね。

気を引き締めて役に入り込むために

ちょっと硬めのネタにも積極的に挑戦していきたいと思っています。たとえばお殿様が出てくるネタも必須です。「妾馬」は、好きな噺のひとつ。ちょっとほろりとくるところがあるのがいいですね。人情噺といえば、「御神酒徳利」なんかもハッピーエンドで、好きな噺です。こういったメリハリの必要な噺も、気負わずに演れる技を身につけたいですね。キリッとして男っぽい印象の着物で、気分を盛り立てて臨むようにしています。

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