やさしく穏やかな笑顔が印象的な千代子さんは、主婦業と両立して続けてこられたお仕事に、ピリオドを打たれたばかり。子育てが一段落した時に再開されたお茶のお稽古にもますます熱が入り、生き生きと趣味にいそしむ日々を楽しんでおられます。
着物が着たくて、お茶の道へ
母は、1年中ずっと着物を着ている人でした。また仕事でも和服の仕立てをしていて、私にとって着物はとても身近なものでした。大好きだし、もっと着たいと思ってはいたのですが、普通に生活していてはなかなか着る機会がありません。そこで着物を着るために、また和室でのお作法を学びたい気持ちもあり、社会人になってから茶道を始めました。たまたま職場の隣の席の人が通っていらしたというご縁で、表千家不白流の師匠にお世話になりました。それから約4年後、26歳の時に結婚しましたが、子どもが生まれる直前までお稽古は続け、師範のお免状をいただいたのを区切りに、いったんお休みすることにしました。結局、二人の息子に恵まれ、仕事と家庭を両立しながら…といっても、実母が同居して家事を手伝ってくれていたので、仕事を続けられたようなものです。そして子育てが少し落ち着いた頃、またお稽古を再開することができたのです。それからもう20年以上が経ちます。
趣味の世界を楽しむ日々
仕事を完全にリタイアした今は、社中の茶会や家元茶会のお手伝いのほか、時々は友人同士でお茶事の真似事をして遊んだりもしています。茶道の世界は総合芸術といわれるだけに本当に奥が深くて、全てを学ぶにはどれだけ時間があっても足りません。せめてどれかひとつを自分なりに深めることができたらと、裂地のことをもっと勉強したいと思っています。母のように和裁を極めることはできませんでしたが、もともと手仕事やお裁縫は好きで、布地を見るとワクワクするんです。袱紗を縫ったりできるようになれれば嬉しいですね。お茶の行事が忙しい時は、どうしてもそちらが優先になりますが、観劇やクラシック音楽鑑賞も好きです。時には主人と演奏会に出かけることも。こうして趣味や着物を心置きなく楽しむ時間が持てることに、心から感謝しています。
私のお気に入り
大好きな江戸小紋は応用範囲も広く
縞の小紋は縦絽で、単衣の時期にも着られます。カジュアルなお出かけにも気軽に着られて、出番が多い一枚です。黒の江戸小紋は、法事や偲ぶ会など、不祝儀に着られる着物をと思って、誂えました。コートや小物も一式、黒で揃え、毎年2月に行われる利休忌の行事にも重宝しています。正装感がありながら堅くなりすぎないところがいいですね。
お茶会にふさわしい品のよい色柄
英に出会うまでは、明るい色の着物がどちらかというと苦手だったんです。でも、最初に色無地をつくらせていただく時に、汚れても洗えるんだからきれいな色をつくってみましょうとアドバイスされて、自分ではかなり思い切ったベージュピンクに。これが、着てみるとたいへん好評だったんです。しかも最初に着たお茶会の日が、なんと豪雨になって。みんなが困っている中、涼しい顔で動き回れたことで、便利さを実感しました。遠山ぼかしの付下げは色も図案も大好きな雰囲気で、即決でした。えもいわれぬ品格があって、家元のお茶会へも堂々と着られますね。
コートで外出もいっそう心がはずみます
おしゃれで明るい印象のコートも英ならではで、どれもお気に入りです。雨コートは塵除けとしても着られてとても便利。雪輪のコートも、とても好きな柄です。意外と合わせやすく、中に着る着物を選ばないんですよね。余り布で利休バッグをつくっていただいけるのも嬉しい趣向で、お出かけが楽しくなりました。