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  3. NO.90「時代におもねらず、古きに学ぶ落語を。」入船亭扇蔵さん

closet : 90
時代におもねらず、古きに学ぶ落語を。

大学卒業後、5年間の社会人生活ののち入船亭扇遊師匠に入門という異例の経歴を持つ扇蔵師匠。古典落語の実力派として知られた入船亭扇橋師匠の孫弟子としても目をかけられ、2015年の真打昇進で「遊一」から大名跡「扇蔵」を担うことに。真摯なお話ぶりからも、整ったお顔立ちそのままの誠実なお人柄があふれます

28歳、ゼロからの落語修業

曽祖父から代々校長まで務めた教員の家に生まれ、私も大学では国文学を専攻し国語の教員免許を取得しました。卒業後は進学塾の講師をしていたのですが、学生時代から足繁く通っていた寄席の楽しさから離れることができず…やってみよう、ダメなら戻ればいいと大決断して落語家を志し、扇遊に入門を許されたのが28歳の時です。それまで落語は見るのが専門、キャッチボールをしたこともない奴がプロ野球に入るようなものですよね(笑)。師匠もよくこんな私をと思うのですが、大師匠にあたる扇橋から「上から受けた恩は下に返すのが筋。弟子入り志願者が来たら面倒を見てやれ」と言われていたそうで、幸運にも一番弟子になれたのです。扇橋にとっても初めての孫弟子ということで可愛がっていただき、厳しくも恵まれた修業時代を送ることができました。

伝えられたものを謙虚に受け継ぐ

まさにゼロからスタートした弟子入りから4、5か月は、ひたすら師匠の身の回りのお世話で、まず落語家としての了見、生き方を教えていただきました。特に徹底されたのが人との信頼関係を大切にすること、そして嘘やごまかしは絶対にいけないということ。扇橋の師匠である五代目柳家小さんの「邪な気持ちは全部芸に出る。落語家は素直でないといけない」という考えが、すべてに貫かれていましたね。私自身、そういった原点の上に教わった落語のおかげで、真打になり扇蔵という名跡を継がせていただけたと思っています。だから現在は論語にある「述べて作らず、信じて古を好む」という言葉そのままに、師匠や大師匠をはじめ偉大な先人たちが残してきたものを信じ、一つひとつ大切に丁寧にやっていくことだけを考えています。そうして年齢と経験を重ねるうちに滲み出てくるものが、いつか「四代目扇蔵らしさ」として認めていただけると嬉しいですね。

私のお気に入り

二つ目昇進の記念に初めて英で誂えた色紋付

2003年、二ツ目に昇進し、前座名「ゆう一」から「遊一」に改名して真打昇進までの15年間活動してきました。二ツ目ともなると興行も増え、紋付が必要になってきます。襲名披露用の黒紋付は、祖母が作ってくれました。そして初めての色紋付は、先輩たちにも愛用者が多い英へ。そこで見立ててもらったのが、これからの成長への期待をこめて節をあしらった竹縞の小紋と爽やかなブルーの色紋付です。以来ずっとお世話になっていて、手持ちのワードローブを生かすコーディネートを提案してくれるので、とても頼りにしています。

夏の寄席は「目にも涼しく」を意識して

暑い季節になると、お客様は寄席に涼みにいらっしゃるのだから、着物も絽のものでいかにも涼しげな着こなしを意識しています。「遊一」時代は明るく軽めの色をよく着ていたのですが、実は扇蔵襲名以降、まずは見た目からでも立場や噺に応じた重厚感も出していきたいと、選ぶ色も渋めに変わってきました。扇橋からじかに稽古をつけてもらった「麻のれん」「茄子娘」など、夏の噺をやる時は、この紋付を着ることが多いです。

落語家として招かれたカジュアルな場に

パーティや食事会、変わったところではカルチャーセンターの講師などにも招かれることがあり、紋付ではちょっと堅苦しいけど、落語家として着物で行きたいという時、ぴったりなのが紋なしでちょっとカジュアルに着られるもの。特に食事をしながら話をしなきゃいけないことがあると、正絹だと汚してしまわないかドキドキしちゃうんですよね(笑)。洗えるきものだと安心して話に集中できます。

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