日本大学法学部の落研で頭角を現し、卒業後に春風亭一朝師匠に入門。2007年、真打昇進とともに一朝師匠の師匠でもあった名跡柳朝の六代目を襲名しました。通も認める実力に、誰からも慕われる人望を備える師匠のまわりには、マイナスイオンが漂っているという噂も。
NHK連続テレビ小説『わろてんか』1月8日(月)~13日(土)放映分に出演予定。お見逃しなく!※放送は終了しました。
落語と向き合い、決意の入門
落研で活動していた大学3年の時、とあるイベントで各大学の落研の代表とプロの噺家さんが一緒に芸を披露する機会があり、その刺激がプロを考える転機になりました。優勝してカップラーメン一箱いただいたこともあって、勘違いしちゃったんですね(笑)。その時は大学を中退して噺家になることも考えたほどでしたが、せっかく入った大学なんだからと親に止められ我に返りました。でも意志は固く、ゼミに入り学業はきちんと修める一方で、みんなが就職活動をしているのを横目にアルバイトに精を出し卒業までに100万円貯めました。で、卒業証書をもらった足で実家に行き「お世話になりました」と挨拶したあと、中野の家賃2万6千円の風呂なしアパートに引っ越して、夏まで寄席通いをしました。自分なりに退路を絶って落語と向き合い、どの師匠につきたいかをじっくり考えたかったんです。この人と心に決めた一朝師匠にお願いにあがり惣領弟子として入門を許されたのは、その年の8月のことでした。
うんと年をとっても現役でいたい
師匠にはのびのびと育てていただき、幸運にも見習いからなんと2カ月で前座に出させていただけるように。1998年に二ツ目に昇格し、結婚はその翌年。長女出産の時には妻が自然分娩で産みたいというので助産院で立ち会い、誕生を見届けてから寄席に上がり、また戻ってきて添い寝したのもいい思い出です。今では子どもたちも大きくなりましたが、子育ては本当に楽しい経験でした。落語に出てくる子どもとのかけあいは、自分と子どもの関係を投影してつくり直していきましたね。真打昇進から10年、いろいろありましたが、今思うのはできるだけ長く落語をやっていきたいということです。90歳、100歳になっても「いたね、あのおじいちゃん」って言われるくらい自然体で座布団に座ってる、そんな落語家が一人くらいいてもいいんじゃないかなって思ってるんですよ。
私のお気に入り
夏の高座に欠かせない紗の紋付
夏生地の紋付は、最初、仲良くさせていただいてる古今亭菊之丞さんが着ていらっしゃるのを見て、「うわあ、いいなあ」と思ったんです。よし私もと、初めて誂えたのは、たしか黒の紗の紋付でした。着てみるとほんのり透けてシャリ感があって見た目にも涼やか、夏の噺にぴったりで嬉しかったですね。それから違う色でもつくり出し、気に入っているもののひとつがこの組み合わせです。爽やかで、さりげなくシックでしょう。男性の着物にもいろんな色の合わせ方があることを、英に教えてもらいました。
軽めのフォーマルにも活躍する一つ紋の羽織
遠目には無地に見える総柄の小紋に、淡いピンクがかった色の一つ紋の羽織のコーディネートは、やわらかな印象で、場に明るく映えてくれます。紋付ほど仰々しくならないので、私の中ではセミフォーマルの位置付けで、結婚披露宴やパーティに呼ばれた時などに活用しています。英ではよく女性ものの反物から選ばせていただくのですが、実際に仕立てた感じをイメージしながら、納得いくまで合わせてみて考えます。いつもおつきあいいただき、感謝です。
ぼたん雪を連想する柄にイメージもふくらんで
この染めもさりげなく見えて、実は手間暇かかっていると伺った万筋の小紋は、袷にしてもらいました。無地感覚で合わせやすく、何かと重宝します。この羽織の柄は、一目見てぼたん雪だなと思いました。冬…特に暮れの噺なんかに、寒さを表現できる色柄じゃないですか。なおかつ、暗くならずやわらかな情緒が漂うところも実にいいですね。お客さんって、私が思っている以上に着物をよく見てくださっていて、「あの時のあの衣裳、素敵でしたね」と声をかけられることも少なくないのですが、すべて英のおかげです(笑)。