美術大学を卒業後、デザイン関係の仕事に就きバブルを謳歌していた20代。思い立って出かけた途上国への旅から、運命は思いがけない方向に舵を切ることに…南米生活でのご体験、ご主人との出会いetc.とても1回ではおさまりきらない裕子さんのドラマチックな半生語りを、ぎゅっと凝縮してお届けします。
マテリアルガールを卒業し途上国支援に
革製品のデザイナーとして独身貴族を楽しんでいた20代終盤、ふとこのままでいいんだろうかと思って。一度、モノがないところに行ってみようとモンゴルに行って感動し、次はブータンへ。そこで知り合った人に「途上国に興味があるなら海外青年協力隊で皮革工芸を教える道もある」と教えていただいたんです。生活を変えたいけど、これまでのキャリアをゼロにすることにためらいがあった私にとって、それは渡りに船でした。しかも応募したらその分野は人手がなく、あっという間にボリビアへの派遣が決まって。もちろん会社にはすぐに辞表を出しました(笑)。「ボリビアってどこ?」というレベルでしたが、公用語のスペイン語を勉強して、意気揚々と2年の予定で旅立ったのです。
素晴らしい南米の思い出を胸に
任務は、施設の子どもたちが自立して暮らせるよう、技術を教えることでした。ショックを受けたのは、豊かではない国で、子どもがどんどん亡くなっていくという事実。でも暮らしている人々の心は豊かでした。私が落ち込んでいると食事に招き、ただでさえ少ないご飯から私の分を用意して「みんなで少しずつ分ければたいしたことないんだからいつでもおいで」って言ってくれたり。日本で贅沢なものも食べてきたけれど、これ以上の食事はなかったですね。結局、任期を終えて帰国後すぐエクアドルに仕事を見つけて、南米に足掛け10年間。滞在中に何度も旅をして、この世のものとは思えない美しい景色もたくさん見ました。エクアドルの大使館に省庁から出向していた男性と出会い、結婚を決めたのが締めくくり(笑)。それからはずっと日本在住で、スペイン語の翻訳の仕事などをやっていますが、新たに通訳案内士の資格を取得し、今春より通訳ガイドとしてデビュー。やってきたことがさまざまなご縁につながった私の人生。主人の定年後には、また一緒に長い旅に出かけられたらいいなと思っています。
私のお気に入り
忘れられない英との出会いエピソード
落語好きの主人の影響で、私も気がつけば落語好きに。なかでも古今亭菊之丞師匠が大好きで、神楽坂の独演会に行った時、英の女将さんがご挨拶に立たれたのを見て「あれが噂の!なんてカッコいい人なの」としびれたのが第一印象(笑)。帰ってすぐネットで検索して、「きもので遊ぼ」の参加を申し込んだんです。やっぱり女将さんも着物も素敵!とすっかり英に惚れ込んで、最初に買った着物がこの小紋。名実ともに英のとりこになった、記念すべき一枚です。
船上パーティーなど国際的なシーンで大重宝
主人のニューヨーク赴任中に向こうに遊びに行って、バハマ諸島やマイアミを周遊する船旅に参加することになり、船中のパーティに備えてつくった付下げです。日本人の海外でのドレスアップは、着物に勝るものはないという確信を持っています。また、船の中って絨毯敷きで意外ときれいじゃないし、潮風のべたつきなんかも気になるんですが、洗えるきものだとノープロブレム。このほかODAの授与式や所属しているお花の会の創立記念会や新年会など、さまざまなフォーマルシーンで役に立っています。
夏のパーティーにも自身を持って
ドレスアップの機会が多いので、着物はオールシーズン揃えていたいと思って、単衣と絽も誂えました。私、英で着物をつくるまでは友禅のかわいい色柄って自分には似合わないと思っていたんですよ。この単衣なんかもとってもきれいで、一目見て大好きになったのですが、これまでなら選んでいなかったと思います。でも洗える安心感と、スタッフの方のおすすめがあって思い切りました。いざ着てみると、みんなから品がいいって褒められるんですよ。「黙っていれば上品な奥様に見える」と言われるので、着物をきた時くらいはがんばって口チャック!でいます(笑)。