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ご贔屓さんのクローゼット

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  3. NO.78「着物が日常にある暮らしを日本人として守りたい。」早川正英さん

closet : 78
着物が日常にある暮らしを日本人として守りたい。

商社を定年退職後、航空関係企業の役員を経て今は低カリウム野菜のドクターベジタブルジャパン株式会社代表取締役としてその躍進を担われるお立場に。奥様はNo.53 にご登場いただいた早川美恵さんです。日本酒と日本文化をこよなく愛し、ご夫婦で謳歌される充実の着物ライフは、まさに憧れの的です。

知るほどに素晴らしい日本文化

妻とは10年前に友人の紹介で出会い、半年後に結婚しました。半ばを過ぎた人生も、この人とならおもしろく過ごせそうだなと思ったのです。ありがたいことにその勘は当たりました。最たるものがともに日本文化を楽しむようになったことでしょう。さかのぼれば京都での学生時代は外国人の観光ガイドボランティア、商社勤務の頃は海外駐在も経験し、むしろ外からの視点で日本文化への関心は常にありました。それを深めることになったひとつのきっかけが、6年ほど前に読んだ日本酒鑑定士・上原浩氏の『純米酒を極める』という本。もともと好きだった日本酒の奥深さにあらためて感じ入り、日本の職人技への敬意が高まりました。さらに妻が着物を着て茶道をするようになり、一緒に和物の舞台や落語に出かけるうちに、自然と自分も着てみたくなったんです。

着ることで着物復権の一助に

なにせ経済人なので、着物に興味を持つとまずマーケットを調べました。するとピーク時の1981年は1兆8千億円あった市場規模が、2015年には6分の1程度になっていることを知り愕然としました。あって当たり前と思っていた文化が、このままでは滅びてしまうではないかと。だからせっせと着て出かけては、「こんなにいいものがなくなっていいと思う?」と話をしたりします。特に私と同世代の女性たちは、嫁入りの時に沢山着物を仕立ててもらったにもかかわらず、ほとんど袖を通していなかったりする。今こそ着なさいと説教しますよ(笑)。こういった人たちが着てくれるかどうかも、ひとつの分水嶺になると思います。ただ、不思議なことに、私と時を同じくしてそれまで仕事一筋だった友人たちに着物愛好家が増えてきているんです。もっとも男性は奥さんの理解がないと難しいようで、その意味でもうちは家庭円満です(笑)。着物振興への貢献などと言うと大層ですが、まず自分自身が楽しむことで魅力を伝えていきたいですね。

私のお気に入り

スーツ感覚でかしこまった場でも活躍

端正な雰囲気のグレーの袷は、妻ともども尊敬してやまなかった木村孝先生に色出ししていただいた辛子色の襦袢の上に着ることが多いです。あとで木村先生のご子息とお揃いと聞いて恐縮しましたが、光栄ですね。衿はご子息とは色違いで、柄の一色をとって青で仕立ててもらいました。この組み合わせに、縫い紋を入れた羽織を合わせて、スーツ感覚でフォーマルな場に出席することも多いです。年初には仕事の関係で開かれる賀詞交換会にも着て行きました。航空業界は女性役員も多いのですが、その時、着物での出席は私一人。ちょっと寂しかったですね。私の姿を見て「いいな。よし自分も」と思ってくれる人が増えれば嬉しいのですが。

英のコーディネートセンスに感服の組み合わせ

細かな市松の模様に惹かれて単衣をつくることにした時に、合わせて提案してもらったのが市松の帯です。なんともスパイスの効いたコーディネートの完成に、感心しました。帯も着物も、単体でも合わせやすくて重宝しています。私は着物で居酒屋なんかに行くのも好きで、勤務を終えていったん自宅に戻り、着替えてからまた出かけることもしょっちゅうです。慣れた今では着流しならものの15分で着替え完了。この気軽さがまた、いいんですよね。

女性もの反物から仕立てられたお気に入りの一枚

どうしても男性ものとなると柄の傾向が無難に偏りがちです。もう少し遊び心が欲しくなっていたところ、落語家さんは女性の反物から仕立ててらっしゃるらしいよ、と妻から聞きまして、機会があれば私もと思っていたんです。ちょうどセールでこの反物を見つけまして、思い切って誂えたらこれが大正解。たまたま幅が広めでしたので、生地を足さずにつくれたのも予想外の幸運でした。今ではちょっとした外出着に、一番活躍しています。英の魅力はその仕立てにもあって、本当に縫製が丁寧だから着た時の形も決まるし、何より着ていて安心。あらゆる面で絶大の信頼を置いています。

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