幼少時より和のお稽古事にいそしみ、そのまま専業主婦として良妻賢母の道を歩まれてきた直江さん。しかし子育てのひと区切りを機に再開された茶道のお稽古にはじまり、お仕事、新しい趣味と、その能力とお人柄ゆえに期せずして世界が広がったとのこと。ますます生き生きと輝かれる素敵な女性です。
茶道の再開が「第二の人生」の一歩に
勤めを経験することなく結婚し、転勤族の夫について慌ただしく歳月が過ぎました。ようやく下の子の高校が決まってひと息ついた頃にもう一度やってみようと思ったのが、お茶のお稽古です。たまたま近所によい先生がいらっしゃったのがきっかけですが、娘時代から慣れ親しんでいたのに着る機会が減っていた着物が着たいというのも大きな動機でしたね。それに茶道なら大好きな日本の文化芸術すべてを網羅できます。久しぶりのお稽古はとても楽しく、昔から美しいものが大好きだった自分自身の感性も、磨かれていく気がしました。そうして余裕のある時間も増えてきたある日、お稽古仲間から「あなたに合っていると思うの」と古美術ギャラリーの仕事を紹介され、お手伝いすることになったのです。齢40代にして初めてのお勤めでしたが、たいへん価値の高い古美術にふれる貴重な体験に学ぶことも多く、楽しく働かせていただきました。
やりたいことは後回しにしない
その後も、少しお暇をいただくとまた別方面からお声がかかることの繰り返しで、もともと好きだった住まいやインテリア関係の仕事が途切れなく続いていて、今も地元の高級家具のお店で週の半分くらい勤めています。もちろん常にスキルアップの努力が必要ですが、私自身一番大切にしているのは、長い主婦生活で根付いた「客としての目線」です。高額商品を扱うことがほとんどなので、どんな提案や対応をしてもらえれば嬉しいかを考え行動してきたことが評価につながったのなら嬉しいですね。必要とされている場所で働くことができるのは幸せです。とはいえ、しゃにむに働くだけではなく、同じくらい趣味の時間を大切にしてきました。今一番はまっているのは和太鼓で、始めて4年半になります。ずっと和太鼓の音に憧憬を感じていたのですが、まさか自分が演奏できるなんて今でも夢のようです。思えば、いつも私を新しい体験に導いてくれたのはよい「ご縁」でした。やりたいと思ったことはためらわずに、とにかくやってみるという姿勢も、出会いを引き寄せてくれるのかもしれませんね。
私のお気に入り
お茶はもちろん、帯を替えれば無限の応用力
紋付の色無地は、茶をたしなむ者の必携品。お茶会から水屋のお手伝いまで、さまざまな場面に活躍してくれます。洗えるきものだと、なおのこと重宝ですよね。また、帯を替えれば装いのイメージが変わるのもよいところで、ちょっとしたお出かけにも愛用しています。選ぶ基準は、やはり顔映りのよいことでしょうか。いくつになっても「はんなり」とした雰囲気を大切にしたいと選んだ色です。きもの英の色無地は地紋も美しく、ひときわ着映えがします。
華美すぎない附下げを品よく
品のよい附下げには、それだけで日本画のような趣を感じます。ぱっと華やかなものも眼福ですが、近年では「年相応」をふまえておとなしめの色柄を選ぶようにしています。ご紹介した2枚も、お茶席にふさわしい趣があり、とても気に入っています。無地場とのバランスが絶妙で、さりげなくセンスを伝えてくれるところもいいですね。
コートはTPOごとに数枚をローテーション
着物を道中の汚れから守るために、どの季節もコートは欠かせません。やはり洗える安心感は格別で、下に着る着物との調和を考えて何枚か揃えました。街着には気軽な感覚で羽織えるおしゃれっぽいボカシや濃色のものを。薄い色目のものは上品なので格の高い着物にと使い分けています。